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 真夏の夜。航太と拓也のカップルが、拓也のアパートに帰ってきた。
 二人とも、揃いの浴衣に身を包んでいて、いかにも夏っぽい雰囲気だ。
 うだるような暑さを吹き飛ばそうと、拓也のアパートからほど近い場所で開催された花火大会に二人で行ってきたのだ。
 人混みの中での花火鑑賞だったので、普通に過ごしている時よりも暑かったし、たっぷり汗もかいたのだが、やはり夜空にはじける威勢のいい花火は、見るだけでも気持ちよくて涼しく感じられた。

 そして、二人で帰ってきたはいいのだが、航太の方は未だに花火の興奮を引きずっていた。
「最後のスターマイン、すげかったよなぁっ!」
 玄関先で、あたりを気にせずしゃべる航太を苦笑しながら拓也が見ていた。
「わかったから、上がれよ。他の住人が変に思うぞ?」
「う……。わーったよ。んじゃ、お邪魔しまーす」
 勝手知ったる拓也の部屋。当然、拓也以外は誰も住んでいないのだが、航太はけじめなのか、ペコリと頭を下げると、雪駄を脱いで部屋に上がった。この雪駄も二人で揃えたらしく、同じデザインのものだった。

「エアコンが壊れてるんだ。悪いな」
 部屋の窓を網戸にしながら拓也が言う。
「いいって。冷房が効きすぎてる方が嫌だし。それに、浴衣だから、エアコンよりも自然の風の方がそれっぽいじゃん」
 実際、窓から入ってくる風は涼しいとまでは行かなくても、締め切って熱気がこもっていた部屋の空気をかき混ぜて、心地いいものに変えてくれている。
「ま、扇風機で我慢してくれ」
 そう言いながら、拓也は部屋の片隅においてある扇風機のスイッチを入れた。部屋の中の空気が流れを作って、じっとりと汗で濡れていた肌が乾いていくのが感じられる。

 どちらかと言うと冷房が苦手で、電車の中では上着が手放せない航太にとっては、このくらいで丁度いい。
「ほれ」
 拓也が冷えたアイスコーヒーを差し出す。よく冷えているらしく、グラスが汗をかいていた。
「あ、サンキュー」
 航太はグラスを受け取ると、ソファに座り込んだ。
「冷てえ」

 一口アイスコーヒーを口に含むと、嬉しそうに航太が笑う。
「まったく……」
 航太に聞こえないように小さな声で拓也は呟くと、自分もアイスコーヒーのグラスを手に、航太の隣に座った。

 実は拓也は、さっきまで少しばかり腹を立てていたのだ。もちろん、航太に対してだ。
 拓也としては、せっかく揃いで新調した浴衣を着て行く花火大会。会場の暗がりで航太とよりそって、腕でも組んで甘い恋人気分に浸りながら見たいなどと目論んでいたのだ。さすがに、一緒に六尺を締めようって提案は却下されてしまっていたが。
 が、しかし、花火大会の初っぱなで上がったスターマイン100連発のおかげで、航太は大興奮。はしゃぎまくってしまったために、当初の予定だった甘い雰囲気などどっかへ吹っ飛んでしまった。

 そんなわけで、ちょっと航太をいじめてやろう。そんな黒い考えに捕らわれていたはずなのだが、浴衣姿で無邪気に笑う航太を見ると、そんな考えはすっかり溶かされてしまっていた。
 二人がほぼ同時にグラスに口を付け、一口飲み込む。
 そのことに、ほぼ同時に二人とも気づき、お互いを見つめ合った。
 コクリ……。
 また、ほぼ同時に、二人が口に含んだコーヒーを飲み込む。
 航太がそっと目を閉じる。

 拓也は、その頬に手を添えると、ゆっくりと顔を近づけていき、唇を合わせた。
「ん……」
 かすかに鼻に抜ける声が航太から漏れる。
 それを聞いた拓也は、航太の身体を抱きしめると、より深いキスをした。
「ん……、んく……」
 ぴちゃぴちゃという音と航太が漏らす声だけが響く。

 二人の間では、舌が別の生き物のように蠢き、絡み合っていた。
 けれど主導権を握っているのは拓也の舌だ。
 それは航太の弱点を的確に突いていた。舌先、舌の裏側、歯ぐき、上あご、そして唇。航太の敏感な粘膜が、拓也の舌でこすられ官能を呼び覚ます。
 感じやすい航太は、そうやって拓也の舌に責められるだけで、興奮してしまい、体温が急上昇してしまう。
「はあ……」
 ようやく口を離した二人は、抱き合いながらお互いの顔を見つめる。

「な、なあ、やっぱり、少し暑い……?」
「そ、そうかも……」
 拓也の問いかけに、少し目をそらしながら航太が答える。その顔は興奮のために真っ赤に染まっていて、額には汗が光っていた。
「そうだ!」
 拓也はそう言うと、自分のグラスを持って、中にあった氷を口に含んだ。四角い普通の氷だが、溶けかけているために、角が取れていた。
 そのまま航太を抱き寄せると、再びキスをする。

 二人の舌が一個の氷を舐めるようにして動く。ピチャピチャという湿った音が響いた。
「へへ……。溶けちまった」
「ん……」
 冷たかった氷も、熱くなった二人の体温で簡単に簡単に溶けてしまい、ただの水に戻っている。
「ちょっと待ってろ」
「え?」

 少し夢見心地だった航太は、拓也の言葉に少しだけ意識を取り戻す。
「これだけあれば、しばらく持つだろ」
 拓也が少し自慢げに見せたのは、ステンレスのボウルに山盛りになった氷。
「な、下着だけ脱ごうぜ」
 拓也が言う。
「う、うん」

 航太もチラチラと氷の方に目をやりながら、素直に従った。
「なんか、スースーして、妙な感じ……」
 下着がなくていきなり浴衣だけなのが、少々不安な航太は、顔を赤くしてそんなことを言う。
「いいじゃん。せっかくの浴衣なんだしさ」
 なにが「せっかく」なのかは若干意味不明だが、拓也はそれでおしきった。
 なにしろ二人とも、さっきまでの興奮の余韻で、そのチンコは8割方勃起していて、剥けた亀頭が浴衣にこすれて妙な感触なのだ。

「よし!」
 拓也はそう言うと、また氷を口に入れて航太に抱きつきキスをする。
「んぐ……」
 さっきの溶けかけた氷とは違って、それなりの大きさだ。少し大きめに口を開けないと入らない。航太は仕方なく口を開けて、拓也が突っ込んでくる氷を受け入れた。
 だが、氷が中に入ってきたことで、航太の口は半ば開いたままの状態で固定されてしまった。
「航太、エロい……」

 口を半開きにした航太の顔を見て拓也が笑う。航太は氷を吐き出して抗議しようと思ったが、そうする前に拓也の口で塞がれてしまった。
「んー……、んんーっ!」
 拓也の舌が、さっきよりも荒々しく航太の口を責める。反撃したくても、口の中で頑張っている氷のおかげで舌が上手く動かせない。
 しかも、拓也の手が、浴衣の中に侵入してきて乳首をいじっている。
 航太は、妙に興奮してしまっていた。
 氷が溶けてきて、ようやく舌が動かせるかと思った頃、拓也の方は素早く2個目の氷を口に含んで拓也の中に押し込んできた。

「んぐっ! ぐーっ!!」
 必死に抵抗しても無駄だった。簡単に氷が押し込まれてしまい、また不自由になる。
 しばらくの間、拓也の舌にもてあそばれていたが、ようやく口を離してくれる。
「はぁ……、はぁ……」
 氷が溶けてできた水を口元から垂らしながら、ぼんやりとした目で航太が拓也を見上げる。
 拓也はニヤッと笑うと、航太の下半身に手を伸ばした。

 拓也が浴衣の裾をはだけると、興奮しきってガチガチに勃起している航太のチンコが現れる。
 だが拓也はそれを単に掴むだけではなかった。
「つ、冷た!!」
 ビクンと航太の身体が跳ねる。
 拓也の手には、いつの間にか氷が隠されていたのだ。亀頭に氷を当てられ、その冷たい感触に航太が身震いする。
「な、何してんだよっ!?」

 航太が抗議するが、拓也の方はどこ吹く風だ。
「すげ……。航太のチンコ熱くなってるから、氷なんかあっという間に溶けちまう……」
 実際、亀頭に当てられた氷は、みるみるその形をなくして水に戻っている。
「や、やめろ……。うわっ!」
 拓也が氷を動かして亀頭を責めると、拓也の身体が硬直する。チンコはビクビクと震え、水をはねちらかした。
 と、拓也が、半分溶けかけた氷を、自分の口に放り込んだ。

「た、拓也……?」
 航太がその姿を呆然と見ている。
「ん……。かなりしょっぱいぞ。やっぱ先走りも相当出てたろ?」
「な……!?」
 からかうように言う拓也に、航太の顔が真っ赤に染まる。
 と、いきなり拓也が航太の足を掴んでひっくり返した。ソファの上で、航太は、まるでおむつを替えられる赤ん坊のような姿になる。

 下半身は拓也にがっちりとホールドされ、上半身は妙に着乱れてしまったものだから、航太はほとんど自由に動く事ができなかった。
「え? あ!? な、何!?」
 混乱している航太の股ぐらから拓也が顔をのぞかせる。
「今度は身体の中を冷やしてやるな?」
「え? そ、それって?」
 ますます混乱する航太。

 だが、拓也はもう一つ氷を取り出すと、口に含んだ。丁寧に舐めて、氷の角を落とす。
「いくぞ……」
 氷を口に含んでいるので、いくぶんくぐもった声で拓也はそう言うと、航太のケツに顔を近づける。
「ど、どうする……。はうぅっ!!」


(つづく)

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